前回、このブログではドイツの大手自動車メーカーであるメルセデスベンツのクリーンディーゼル「ブルーテック」の排気ガス不正についてを記事にしましたが、ドイツメーカーがアメリカで基準のがれをしたのはフォルクスワーゲンに次いで二社目となりましたよね。
フォルクスワーゲンの時には莫大な制裁金やリコール費用が負担になって倒産の噂が流れましたが、ドイツ政府はドイツ銀行に融資をさせて破綻を回避した経緯があります。
そして今回のベンツの排ガス不正プログラムの事件が発生したのですが・・・もしかしたらベンツにも破産するかもしれないという疑惑が出てきているのです。
しかしVWの時とは違ってメルセデスベンツの破綻は救われないのではないかと言われはじめていて、それどころかベンツを救えばドイツ銀行やドイツ政府自身が破綻してしまうとまで考えられるようになってきたのです。
ドイツの経済に詳しくない人は自動車メーカーのディーゼルエンジン不正がドイツ銀行や政府の破綻に繋がるなんて考えてもいないようですが・・・今回はこのあたりを少し説明してみたいと思います。
フォルクスワーゲンとベンツの倒産の可能性
ヨーロッパでは二酸化炭素の排出量が少ないディーゼルエンジンが選ばれてきました。排気ガスの問題もクリーンディーゼル技術が発達したことでクリアされたものと思われていたのです。
しかしフォルクスワーゲンもメルセデスベンツも規制を逃れるための不正なプログラムを搭載することによって、莫大な量のNOxを大気中にバラ撒いてしまう結果となりました。
ヨーロッパではクリーンディーゼルの普及のために多額の補助金が配られたことからシェアを大きく伸ばすことに成功したのです。また、アメリカや中国や日本においてもブランドイメージの向上によってドイツメーカーのクリーンディーゼルの販売数は大きな伸びを見せていました。
しかし、ヨーロッパや中国の主要都市では大気汚染が深刻化してきていたのですが・・・これは今考えると不正技術で汚染物質を大量に撒き散らすフォルクスワーゲンやベンツのクリーンディーゼルが主な原因になっていたのでしょうね。
ところがアメリカの当局の調査によってベンツやVWのクリーンディーゼルは全然クリーンでないことが発覚してしまったのです。
これによって両社はアメリカ政府や消費者から多額の賠償金を請求されると共に、稼ぎ頭であったクリーンディーゼルへの信頼性が大きく揺らいだことから販売数を大きく減らすことに繋がるわけです。
通常であればこれほどのスキャンダルが発覚した場合はVWもベンツも倒産する可能性が高くなるわけですが、フォルクスワーゲンの場合はメルケル首相がドイツ銀行に金を出させることによって救済という方向に動いたわけです。
ベンツの場合も同じような手法で倒産を防げばいいと思われていたのですが、ここにきてドイツ銀行の経営が危機的な状態であることが明らかになってきたのです。
ドイツ銀行が破綻するとなると・・・マジでベンツもフォルクスワーゲンも倒産する可能性が高くなってしまうのですね。だってドイツ国内には金を出すところがないのですから誰も救済できないのです。
同様にアウディもポルシェもとなると、デリバティブで破綻の危機にさらされているドイツ銀行には救済する余裕などもうないわけですね。
そうなると、フォルクスワーゲンもベンツもアウディもポルシェも・・・ドイツの自動車メーカーのほとんどに倒産の可能性が出てくるわけです。
ドイツ銀行とドイツ政府の破綻の可能性
非常に危険なことが今年に入って起きているのですが、これがリーマン・ショックの再来になるのではないかと言われているのです。
その危険なことというのがドイツ銀行の株価の大幅下落なのですが、ただ株が下がったというだけではなくてドイツ銀行が破綻するのではないかと疑われるぐらい危ないわけですね。
しかも、この世界中に影響力を持っていて大きすぎて簡単には潰せないドイツ銀行には破綻しそうな兆候が次々と現れているのです。
その一つが大規模なリストラですが、全従業員の25%を解雇したのですが・・・これって大手の銀行が潰れる時に必ず行うことなのです。
またドイツ銀行は数多くの訴訟を抱え多額の賠償金支払いを行い続けているのですが・・・これに加えてギリシャ絡みのデリバティブが焦げ付きそうという噂が流れているのです。
そのデリバティブの総額が75兆ドルですがドイツのGDPが4兆ドルですので、デリバティブが原因で倒産してもドイツ政府はドイツ銀行を救済することはできないわけです。
このような経営状況が表面化したことによって格付けは数段階も引き下げられて、二人のCEOは辞めてしまったのですね。実はこれも銀行が破綻する時に起きがちな現象なのです。
ベンツとVWとドイツの破綻まとめ
今回は「メルセデス ベンツの倒産、フォルクスワーゲンの破産の可能性がドイツの破綻に繋がる!」ということでしたが、フォルクスワーゲンの時はリコール台数が1100万台にもなりましたがベンツで不正を行っていた台数はどのくらいの規模になるのでしょうか?
今回もドイツ銀行に融資をさせれば間違いなくドイツ銀行は破綻してしまうでしょう。(メルケル首相はVWの時に1兆円以上も融資させていましたが、フォルクスワーゲンが倒産しないという確証などないのです。)
日本は借金大国でドイツは健全財政という話を多く聞きますが、それは嘘なのです。
日本では民間の大手銀行(みずほ、三井、三菱、郵便貯金銀行)を助けるために政府が借金を背負っている形になっています。実際にこの4銀行は莫大な黒字なのですから。
それに対してドイツ政府はありとあらゆる借金を民間銀行に押し付けているだけなのです。これはフランスやイギリスも同じような構図なのですね。
しかし最終的には、もしドイツ銀行が破綻してしまえばドイツ政府が救済に動かなければならないですので・・・結局は国の借金になってしまうわけです。
でもここで問題になってくるのが・・・日本は莫大な借金に耐えることができていますが、果たしてドイツはドイツ銀行を救済することができるのでしょうか?そしてその負債を肩代わりしてドイツ政府自体が耐えることができるのでしょうか?
私はできないと考えています。日本とアメリカだからこそ莫大な借金があっても普通に国家を運営していくことができるのです。ドイツやフランスのヨーロッパの国々や中国などには到底できることではないのです。
そういう意味では、ベンツとフォルクスワーゲンの排ガス不正プログラムは自動車メーカーの倒産だけではなくて・・・ドイツ銀行の破綻とドイツ自体の破綻へと繋がるキッカケになるのではないでしょうか?